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📄 ご相談の背景
先日、父・雄一郎さん(仮名)を亡くされた鈴木恵子さん(仮名)。相続人は、恵子さん、長年お父様と同居していた兄の一郎さん(仮名)、そして遠方に住む弟の二郎さん(仮名)の3人です。遺言書がなかったため、相続人全員で遺産分割について話し合うことになりました。
しかし、その話し合いは、恵子さんが想像していたものとは全く違う、辛いものとなりました。兄の一郎さんが、「俺は長年親父と同居し、面倒を見てきた。だからこの家(評価額4,000万円)は全部俺のものだ。お前たちは残りの預貯金でも分けていればいい」と、あまりにも一方的な主張を始めたのです。
恵子さんが法律通りの分割を求めても、兄は聞く耳を持ちません。さらに追い打ちをかけたのが、お父様の預金通帳を見て発覚した使途不明金の存在でした。亡くなる前の2年間で、口座から合計700万円以上もの大金が引き出されていたのです。兄に問い詰めても、「親父の生活費や入院費に決まっているだろう」と声を荒げるばかりで、具体的な説明は何一つありません。兄への不信感と、話し合いが全く進まない絶望感の中で、恵子さんは当事務所にご相談に来られました。
💬 ご質問と弁護士の回答
質問1:「『長年親と同居し、面倒を見た長男だから家は自分が相続する』という兄の主張は、法的に認められるのでしょうか?」
回答:
ご安心ください。お兄様の「家は全部自分が相続する」という主張が、法的にそのまま認められることはありません。遺言書がない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に従って遺産を分けるのが大原則となります。今回のケースでは、相続人はお子様3名ですので、恵子さん、一郎さん、二郎さんの法定相続分は、それぞれ資産のプラスもマイナスもすべて含めた全遺産に対して「3分の1」ずつです。
「長男だから」「同居していたから」といった事情だけで、他の相続人の相続分が自動的になくなることは、決してありません。まずは、ご自身の権利が法律でしっかりと保障されていることを知り、冷静に対応することが大切です。
質問2:「父の口座から多額の引き出しがあり、兄が使い込んだ疑いがあります。このお金について、遺産分割で追及することはできますか?」
回答:
はい、強く追及すべきです。被相続人の預貯金を管理していた相続人が、その使途を明確に説明できないお金(使途不明金)は、相続において大きな問題となります。まずは、金融機関からお父様の口座の取引履歴を取り寄せ、いつ、いくら、どこへ出金されたのかを正確に把握することから始めます。
その上で、お兄様に対して、その使途について具体的な説明と証拠(領収書など)の提出を求めることができます。もしお兄様がご自身の目的のために無断で費消していたことが疑われる場合、その金額を「遺産」に持ち戻して遺産分割協議を行うよう主張したり、不当利得として返還を求めたりすることが可能です。ただし、お兄様が「父からもらった」「頼まれて引き出した」と反論してくることも想定され、その立証には専門的な対応が求められます。
質問3:「兄が感情的になり、全く話し合いになりません。このような場合、どうすればよいのでしょうか?」
回答:
当事者同士での話し合い(遺産分割協議)がこれ以上進まないと判断した場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるのが有効な手段です。調停では、調停委員という中立な第三者が間に入るため、お兄様も感情的になるのを抑え、冷静に話し合いに応じる可能性が高まります。
特に使途不明金の問題は、事実関係の調査や法的な主張が複雑になりがちです。調停という公的な場で、証拠に基づいて一つ一つの論点を整理していくことで、公平な解決を目指すことができます。このような法的な手続きを円滑に進め、ご自身の正当な権利を主張するためにも、弁護士が代理人として交渉や手続きを行うことが、解決への近道となります。
📌 この事例のポイント整理
- 遺言書がない場合の遺産分割は「法定相続分」が基本であり、同居などの事実だけで一方的に多くの遺産を取得できるわけではない。
- 被相続人の預金に不自然な引き出し(使途不明金)がある場合、その使途を明確にするよう求め、場合によっては遺産への返還を主張できる。
- 当事者同士で感情的な対立になり話し合いが進まない場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用して、第三者を交えた冷静な話し合いの場を持つことが有効である。
📣 弁護士からのアドバイス:『家族だから』で曖昧にせず、財産の問題は明確に
ご家族が亡くなられた後、その財産の管理を特定の相続人が行っていた場合、今回のようなトラブルは残念ながら非常に多く発生します。特に、長年親と同居していると、親の財産と自身の財産の境界線が曖昧になりやすく、それが大きな不信感や対立の火種となってしまうのです。
お金の問題は、たとえ家族であっても明確にすることが、最終的に良好な親族関係を維持するためにも極めて重要です。
「家族なのだから」「今まで面倒を見てきたのだから」という言葉で、ご自身の正当な権利が曖昧にされてしまう前に、ぜひ一度専門家にご相談ください。客観的な証拠に基づき、法的な観点から冷静に話し合うことが、こじれてしまった糸を解きほぐす最善の方法です。
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