(家族信託活用事例)不動産オーナーの認知症対策

不動産のオーナーの方の中には、高齢になって今後の物件の管理に不安を感じ、家族に管理を任せたいと考えられる方も多くいらっしゃいます。

不動産のオーナーが家族に物件の管理を任せ、安心して老後を暮らせるようにするためには、本人が元気で十分に判断能力があるうちにあらかじめ対策を講じておくことが大切です。

ここでは、家族信託の活用による不動産オーナーの認知症対策についてご説明します。

相談事例

82歳になる父は賃貸用のマンションを所有しており、両親はその家賃収入と年金で生活しています。父は自分でマンションを管理していますが、最近物忘れの症状が見られるようになってきました。

このまま父の認知症がひどくなった場合、今後の入居希望者への対応や、建物の修繕、建て替えなど、私が代わりにしてあげることはできますでしょうか。

また、そういった場合に備えて、現在とるべき対策はあるでしょうか。

不動産オーナーには認知症対策が必要

認知症などにより本人の判断能力が不十分となったとしても、原則として家族が本人に代わって契約行為を行うことはできません。

そのため、何も対策をとらないと、収益物件の修繕や建て替え、売却といった契約はもちろん、本人名義で新しい入居希望者との賃貸借契約を結ぶことも難しくなります。

家族が本人に代わってこのような契約行為を行うためには、あらかじめ家族信託を設定したり、判断能力が不十分となった後に成年後見の申し立てを行う必要があります。

家族信託による不動産オーナーの認知症対策

家族信託を活用することで、家族に収益物件の管理処分権限を与え、将来のリフォームや建替え、売却なども含めて、家族に管理を任せることが可能となります。

本件の事例では、例えば次のように家族信託を設定することが考えられます。

  • 委託者兼第一受益者  父親
  • 第二受益者      母親(父親が死亡した場合)
  • 受託者        子
不動産オーナーの認知症対策

これにより、受託者である子は、父親に代わって単独で賃貸マンションの管理を行い、新規入居者との契約や、建物の修繕、建替えを行うことが可能となります。

父親は賃貸マンションから発生する収益を確保したまま、マンションの管理を子に任せることで、安心して老後を過ごすことが可能となります。

父親が元気なうちは子と一緒にマンションを管理し、父親の判断能力が失われた際に子が単独で管理を行うということも可能です。

また、家族信託では、委託者は信託終了後の残余財産の帰属先を指定することができます。

この帰属先を指定することで、別途遺言で指定しなくても、将来相続が生じたときに対象の財産を指定先に承継させることができます。

例えば、賃貸マンションを2つ所有しているような場合には、家族信託によって1つは息子に、1つは娘にそれぞれ管理を任せ、相続の際にはそのまま各自に管理していた不動産を相続させるといった指定も可能です。

成年後見制度による不動産オーナーの認知症対策

判断能力が不十分な人の財産管理を支援する制度の1つとして、成年後見制度があります。

成年後見制度とは、本人の判断能力が不十分となった場合、家庭裁判所に申立てを行い、家族が成年後見人等に選任されることで、本人に代わって財産の維持・管理を行うことができるようになります。

しかし、成年後見制度では、収益物件の大規模な修繕や建て替え、売却など、本人の財産維持のために本当に必要かどうか家庭裁判所に判断されることになります。

裁判所の判断によっては、こういった行為は必要と認められないケースも考えられます。

そのため、将来収益物件のリフォームや建替え、売却なども含めて検討する場合には、成年後見制度を利用するメリットは薄いでしょう。

また、成年後見制度を利用する場合、申立てから成年後見人が選任されるまで数か月程度の時間を必要とします。

そのため、本人の判断能力が失われてから家族が後見人に就任するまでの間、入居希望者との契約も含めて、建物の管理のための契約をすることができないというデメリットもあります。

keyboard_arrow_up

0728130595 問い合わせバナー 無料法律相談について