【ご相談事例】亡き父が残した連帯保証人の地位。相続放棄をしたら、死亡保険金も受け取れないの?

📄 ご相談の背景

佐藤 愛美(さとう まなみ)さん(仮名)からのご相談です。

先日、父である幸雄さん(仮名)を亡くし、母の恵子さん(仮名)と共に、悲しみに暮れる間もなく葬儀などの手続きに追われる毎日を送っていました。そんな中、愛美さんの心をさらに重くする大きな不安が頭をよぎります。それは、父が生前、母の弟である鈴木健司さん(仮名)のアパートの連帯保証人になっていたことです。

健司さんは以前にも家賃を滞納したことがあり、保証会社から父のもとに連絡が来ていたのを愛美さんは覚えていました。「もし、また滞納したら…」。父が亡くなった今、その重い責任は誰が負うのでしょうか。

そんな矢先、保険会社から連絡があり、父が受取人となっていた入院給付金や、母が受取人に指定されている死亡保険金などが支払われることを知りました。「連帯保証人の義務は引き継ぎたくない。でも、相続放棄をしたら、母の今後の生活の支えとなるはずの保険金まで受け取れなくなってしまうのでは…?」

父を亡くした悲しみと、差し迫る経済的な不安。相反する問題に板挟みになった愛美さんは、どうすれば良いか分からなくなり、当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「父が負っていた連帯保証人としての義務は、相続人である母や私が引き継がなければならないのでしょうか?」

回答:
はい、残念ながら、連帯保証人としての義務(保証債務)も、借金と同じ「マイナスの財産」として相続の対象となります。何もしなければ、原則として法定相続分に応じて、お母様と愛美さんがその義務を引き継ぐことになります。

しかし、ご安心ください。このような場合に備えて、法律には「相続放棄」という手続きが用意されています。家庭裁判所に申述(申立て)をすることで、初めから相続人ではなかったことになり、借金や連帯保証債務を含む一切の権利と義務を引き継ずに済みます。まずは、こうした解決の道筋があることを知り、少し落ち着いて今後のことを考えていきましょう。

質問2:「相続放棄をすると、父の死亡によって受け取れるはずの死亡保険金や入院給付金なども、すべて受け取れなくなってしまうのでしょうか?」

回答:
非常に重要なご質問です。結論から言うと、「受け取れるもの」と「受け取れなくなるもの」があります。重要なのは、そのお金が「誰の財産か」という点です。

  • 死亡保険金(受取人:お母様)→ 受け取れます。
    これは相続財産ではなく、保険契約に基づいて「受取人であるお母様固有の財産」と見なされるため、お母様が相続放棄をしても問題なく受け取ることができます。
  • 入院給付金(受取人:お父様)→ 受け取れません。
    こちらは受取人が亡きお父様本人であるため、お父様の財産(相続財産)となります。したがって、相続放棄をすると、この給付金を受け取る権利も放棄することになります。

ご相談の「介護保険料」とある任意保険についても、受取人が誰に指定されているかを確認する必要があります。もしお父様本人や「法定相続人」と指定されている場合は相続財産となり、相続放棄をすると受け取れません。このように、判断が難しい部分があるため、専門家による正確な財産調査が不可欠です。

質問3:「もし母だけが相続して連帯保証人になった後、叔父が家賃を滞納したらどうなりますか?母が自己破産すれば支払いを免れ、私に請求が来ることはありますか?」

回答:
もしお母様が相続を選択した場合、お父様の連帯保証人としての地位をすべて引き継ぐことになります。連帯保証人は、単なる保証人とは異なり、万が一叔父様が家賃を滞納した場合、大家さんや保証会社から滞納家賃の全額を直接請求される可能性があります。

お母様の資力で支払えない場合、自己破産という選択肢も法的には考えられます。しかし、自己破産には一定の財産を手放さなければならないなどのデメリットもあります。

ご質問の「愛美さんへの請求」についてですが、愛美さんご自身がきちんと相続放棄の手続きを完了していれば、お母様が相続した後に発生した支払いについて、愛美さんに請求が来ることは一切ありません。相続放棄をすることで、将来にわたる不安の連鎖を断ち切ることができるのです。


📌 この事例のポイント整理

  • 賃貸借契約の連帯保証人の地位は、借金と同様に相続の対象となる「マイナスの財産」です。
  • 相続放棄をすれば、プラスの財産(預貯金、不動産など)も、マイナスの財産(借金、保証債務など)も、一切引き継ぐ必要がなくなります。
  • 死亡保険金は、受取人に指定された人の「固有の財産」であるため、相続放棄をしても受け取ることが可能です。
  • 相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所で行う必要があり、迅速な判断が求められます。

📣 弁護士からのアドバイス:「知らなかった」では済まされない、連帯保証債務の相続

今回のように、亡くなった方が第三者の連帯保証人になっていたというケースは、決して珍しくありません。連帯保証債務は、通常の借金と違って故人の通帳や書類からは見つけにくく、亡くなってしばらくしてから突然、債権者(大家さんや保証会社)からの請求で発覚することも多い、非常に厄介な問題です。

相続というと、ついプラスの財産に目が行きがちですが、相続で最も注意すべきは、こうした「見えない負債」なのです。

相続放棄には「3ヶ月」という短い期限(熟慮期間)があります。この間に、亡くなった方の財産をすべて調査し、相続するか放棄するかを決めなければなりません。しかし、悲しみの中で、また仕事や日々の生活を送りながら、ご自身だけで正確な財産調査を行うのは大変な困難を伴います。

「保険金は受け取りたい、でも借金は引き継ぎたくない」というお気持ちは、誰もが抱くものです。どの財産が相続の対象となり、どうすればご自身の権利を守れるのか。判断に迷われたら、手遅れになる前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの状況に合わせた最善の解決策を、一緒に見つけていきましょう。


🏢 相続のご相談は、大東法律事務所へ

突然の相続発生で、何から手をつけて良いか分からない、予期せぬ借金や保証債務が見つかって不安だ、という方は少なくありません。特に相続放棄には時間的な制約があり、ご自身だけで判断するのは大きなリスクを伴います。問題を一人で抱え込まず、まずは専門家である弁護士にお話しください。あなたの不安を解消し、最善の未来へ進むためのお手伝いをさせていただきます。

当事務所では、相続に関する初回のご相談は無料となっております。
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