【ご相談事例】相続人の一人と連絡が取れない…どうやって遺産分割を進める?

📄 ご相談の背景

お姉様・美沙さんを亡くされた佐藤悦子さん(仮名)。悲しみに暮れる間もなく、預金や株式、不動産といった遺産の相続手続きが始まりました。

相続人は悦子さんの他に、もう一人の姉妹と11名もの甥姪たち。人数が多いことに不安を感じつつも、ほとんどの親族とはすぐに連絡がつき、皆協力的だったため、悦子さんは少しだけ安堵していました。

しかし、その安堵も束の間、甥の一人である山田五郎さん(仮名)だけが、どうしても連絡が取れないという壁に突き当たります。電話はつながらず、手紙を送っても「宛先人不明」で戻ってきてしまう状況。一体どこで何をしているのか、誰も五郎さんの現在の状況を知りませんでした。

「相続人全員の合意がないと、遺産分割は進められないらしいけど、このままではどうにもならない…」。焦りと不安が募る中、当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「相続人が一人でも欠けたままでは、本当に遺産分割協議はできないのでしょうか?」

回答:
はい、その通りです。遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員で合意することが法律上の大原則となります。たとえ長年音信不通であったり、行方が分からなかったりする方がいても、その方を抜きにして勝手に手続きを進めることはできません。もし行方不明の相続人を除外して作成した遺産分割協議書があっても、それは法的に無効となってしまいます。

しかし、ご安心ください。法律には、このような八方ふさがりの状況を打開するための制度がきちんと用意されています。諦める必要はありません。

質問2:「行方不明の相続人がいる場合、具体的にどのような手続きを取れば、遺産分割を進められるのでしょうか?」

回答:
まず、「戸籍の附票(こせきのふひょう)」などをたどって、行方不明の方の現在の住所地を徹底的に調査することから始めます。この調査によって、転居先が判明し、連絡がつくケースも少なくありません。

それでも所在が確認できない場合、主に次の3つの法的な手続きを検討することになります。

1.失踪宣告の申立
7年以上もの間、生死が不明な場合に、家庭裁判所に申し立てる手続きです。これが認められると、その方は法律上「死亡した」とみなされ、その方のお子さんなどが代わって遺産分割協議に参加します。

2.不在者財産管理人選任の申立て
行方不明ではあるものの、失踪宣告の要件を満たさない場合に利用できる手続きです。家庭裁判所に行方不明の方の「代理人」を選任してもらい、その代理人を交えて遺産分割協議を進めます。

3.公示送達による遺産分割審判の申立て
家庭裁判所に遺産の分け方を決めてもらう手続きです。但し、分割方法に争いがあるような場合には申立が却下される場合もあります。また、遺産に不動産がある場合には、不動産鑑定士による鑑定が求められ、鑑定費用(数十万円)が必要になる可能性があります。

どの制度を選択すべきかは、行方不明の期間や遺産の内容、ご親族の状況によって異なり、専門的な判断が求められます。

質問3:「家庭裁判所での手続きは、自分たちで進められますか?また、手続き後の協議で注意すべき点はありますか?」

回答:
これらの手続きは、いずれも家庭裁判所での手続きが必要となり、申立てのためには様々な書類を収集・作成する必要があります。ご自身で進めるには、多くの時間と労力がかかる可能性があり、法的な判断に迷う場面も少なくありません。

また、手続き後の注意点も重要です。「失踪宣告」の場合は、新たに相続人となった方と一から協議を始める必要がありますし、「不在者財産管理人の選任」の場合は、選ばれた管理人は行方不明の方の利益を守る立場のため、その方の法定相続分をきちんと確保した分割案を考える必要があります。

このように、どの手続きを選択するかという入口の判断から、その後の複雑な利害調整まで、専門的な知識が求められる場面が多々あります。弁護士は、ご状況にとって最適な法的手続きを見極め、円滑な解決に至るまでのお手伝いをすることができます。


📌 この事例のポイント整理

  • 遺産分割協議は、相続人全員の参加が絶対条件であり、一人でも欠けると手続きを進められません。
  • 行方不明の相続人がいる場合、まずは弁護士による戸籍等の調査で、徹底的に所在を確認することが第一歩です。
  • 調査しても見つからない場合、「失踪宣告」や「不在者財産管理人の選任」、「遺産分割審判」といった法的手続きで解決を図ります。
  • どの手続きが最適かの判断や、その後の複雑な交渉には専門的な知識が不可欠であり、弁護士に相談することで円滑な解決が期待できます。

📣 弁護士からのアドバイス:相続人の行方不明は、誰にでも起こりうる問題です

「相続人が多くて、中には疎遠な人もいる」。これは、決して珍しいケースではありません。今回の事例のように、相続関係が複雑化する中で、一部の相続人と連絡が取れなくなってしまうことは、誰にでも起こりうる問題です。

多くの方が、「話し合えば何とかなるだろう」と考えがちですが、法的な手続きは、感情とは別の次元で、厳格なルールに則って進められます。行方不明の方が一人いるだけで、預金の解約も、不動産の名義変更も、すべてが凍結されてしまうのです。

もし相続人の中に連絡が取れない方がいると判明した場合は、ご自身で悩み続けるのではなく、できるだけ早く専門家にご相談ください。状況を正確に把握し、法的な見通しを立て、計画的に手続きを進めることが、問題を深刻化させないための最善の策です。一人で抱え込まず、まずは専門家に現状をお話しいただくことが、解決への確かな第一歩となります。


🏢 相続のご相談は、大東法律事務所へ

相続人の中に行方不明の方がいて遺産分割が進まない、相続手続きが複雑で何から手をつけていいか分からないなど、お一人で悩んでいませんか。

大東法律事務所では、今回のような行方不明の相続人がいるケースにも豊富な経験と実績がございます。ご依頼者様のお気持ちに寄り添いながら、最適な法的手続きを選択・実行し、円満な解決まで責任を持ってサポートいたします。

当事務所では、相続に関する初回のご相談は無料となっております。
相続でお悩みの方は、今すぐご相談ください。


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