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📄 ご相談の背景
山田一郎さん(仮名)は、ご結婚されてから約20年間、お父様名義のご実家でご両親と共に暮らしてきました。数年前には、ご両親が快適に過ごせるようにと、ご自身の貯金から数百万円を投じてリフォームも行いました。一郎さんにとっては、家族との思い出が詰まった、かけがえのない我が家でした。
しかし、先日お父様が亡くなり、相続が始まると状況は一変します。2人の妹さんから、「お兄さんだけが家に住み続けるのは不公平だ。この家を売却してお金で分けるか、さもなければ私たちの相続分に相当するお金(代償金)を支払って家を買い取ってほしい」と要求されたのです。
提示された代償金は、一郎さんにとって到底すぐには用意できない高額なものでした。長年住み慣れた家を今さら手放したくない、しかし、妹たちの言い分も全く分からないわけではない…。どうすれば自分の暮らしを守り、家族との関係を壊さずに解決できるのか、出口の見えない不安に苛まれた一郎さんは、当事務所の扉を叩かれました。
💬 ご質問と弁護士の回答
質問1:「他の相続人の言う通り、私はこの家を出ていくか、高額なお金を支払うしかないのでしょうか?」
回答:
いいえ、必ずしも他の相続人の要求通りにする必要はありません。
他の相続人が主張するように、遺産であるご自宅を一郎さんが取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払うという解決方法は、遺産分割における一般的な手法の一つです。しかし、その金額は相続人全員の合意によって決めるべきものであり、一方的に提示された金額を鵜呑みにする必要は全くありません。一郎さんには、このままご自宅に住み続けながら、法的に妥当な解決策を探る権利があります。
質問2:「家の価値(評価額)はどのように決まるのでしょうか?また、私が行ったリフォームは考慮してもらえないのですか?」
回答:
家の価値は、相続人全員が合意すればその金額で問題ありませんが、意見が対立する場合は、専門家である不動産業者や不動産鑑定士に評価を依頼し、客観的な時価を算出するのが一般的です。相手方が提示する評価額が、必ずしも適正とは限りません。まずは冷静に、その金額の根拠を確認することが重要です。
また、一郎さんがご自身の費用で行ったリフォームについては、お父様の財産の維持または価値の増加に貢献したものとして、「寄与分(きよぶん)」を主張できる可能性があります。寄与分が認められれば、その分だけ一郎さんが取得できる遺産の額が増えることになり、結果的に支払う代償金の額を減額できる可能性があります。
ただし、寄与分を法的に主張し、他の相続人や家庭裁判所に認めてもらうためには、「特別な貢献」であったことを客観的な証拠(リフォームの契約書や領収書など)に基づいて具体的に証明する必要があり、そのハードルは決して低くありません。
質問3:「もし話し合いでまとまらない場合、どうなってしまうのでしょうか?どうやって話し合いを進めたらよいですか?」
回答:
当事者同士での話し合い(遺産分割協議)で合意に至らない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。調停は、裁判官や調停委員という中立な第三者を交えて、冷静に話し合いを進める手続きです。感情的な対立が激しくなってしまった場合でも、法的な論点に沿って建設的な議論ができるというメリットがあります。調停でも話がまとまらなければ、「審判」という手続きに移行し、最終的には裁判官が遺産の分け方を決定します。
まずは弁護士が代理人として他の相続人と交渉することで、一郎さんの正当な権利を法的な根拠に基づいて主張し、感情的な対立を避けながら、妥当な解決ラインを探っていくことが可能です。不動産鑑定士と連携して適正な評価額を算出したり、寄与分を的確に主張したりと、専門的なサポートを通じて、ご依頼者様にとって最善の解決を目指します。
📌 この事例のポイント整理
- 特定の相続人が被相続人名義の不動産に住んでいる場合、他の相続人から代償金の支払いを求められるのは典型的な相続トラブルです。
- 不動産の評価額は争いの大きな原因となります。相手の提示額を鵜呑みにせず、不動産鑑定など客観的な評価を検討することが重要です。
- 被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合(例:家のリフォーム費用負担)、その貢献度に応じて「寄与分」が認められ、相続分が有利になる可能性があります。
- 当事者間の話し合いで行き詰った場合は、弁護士に依頼し、法的な根拠に基づいた交渉や、家庭裁判所での調停手続きを進めることで、円満な解決につながります。
📣 弁護士からのアドバイス:「親の家」の相続は、感情と法律が交錯する問題です
今回の一郎さんのように、ご両親の家に同居・近居していた方が相続を迎えると、他の相続人から「あなたは親のそばにいて色々良くしてもらったのだから」といった感情的な反発を受け、遺産分割で厳しい要求を突きつけられるケースは決して珍しくありません。
長年住み慣れた家は、単なる財産ではなく、生活の基盤であり、家族の思い出そのものです。それを守りたいというお気持ちは、非常に切実なものです。
しかし、感情的に対立してしまうと、本来まとまるはずの話もこじれてしまい、解決がより困難になってしまいます。大切なのは、ご自身の正当な権利を冷静に主張しつつ、他の相続人にも配慮した、公平な解決策を見出すことです。そのためには、法的な見通しを正確に立て、有利な証拠を揃え、交渉の道筋を戦略的に描く必要があります。
お一人で抱え込まず、問題が深刻化する前に、ぜひ一度、相続問題に詳しい弁護士へご相談ください。専門家が間に入ることで、ご自身の心の負担を軽くし、円満な解決への最短ルートを歩むお手伝いができます。
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