「親の遺産を整理し始めたら、想定していたより預貯金が大幅に少ない…」 「親と同居していた兄が財産管理をしていたが、何にいくら使ったのか全く教えてくれない」
このような状況は、相続において最も深刻で、精神的に大きなストレスを伴うトラブルの一つです。家族を信頼していたからこそ、不信感や裏切られたという感情は計り知れません。
しかし、感情的に相手を問い詰めるだけでは問題は解決しません。大切なのは、冷静に、そして法的な手順に沿って行動することです。この記事では、兄弟による財産の使い込みが疑われる場合に、あなたが取るべき具体的なステップを段階的に解説します。
このページの目次
「使い込み」とは?
法律上、相続財産の「使い込み」が問題となるのは、主に以下のようなケースです。
- 被相続人の生前の使い込み
親の判断能力が低下している状況を利用し、特定の相続人が無断で預金を引き出したり、自分のために費消したりするケース。 - 被相続人の死後の使い込み
親が亡くなった後、遺産分割協議が成立する前に、特定の相続人が勝手に預金を引き出して使ってしまうケース。
これらの行為は、他の相続人の権利を侵害するものであり、法的に返還を求めることが可能です 。
【解決への3ステップ】財産を取り戻すための具体的な手順
使い込みが疑われる場合、以下の3つのステップで対処を進めていくのが基本です。
ステップ1:証拠の収集と財産の調査
相手に返還を求めるには、「いつ、誰が、いくら、何のために」財産を動かしたのかを客観的に示す証拠が不可欠です。
最重要:金融機関の取引履歴の取得
まず、被相続人名義のすべての銀行口座について、金融機関から取引履歴を取り寄せます。特に、被相続人が亡くなる前の数年分(可能であれば5年~10年分)を取得して内容を確認しましょう。
チェックするポイント
- 高額な出金、頻繁な出金
- 被相続人の生活費とは考えにくい使途不明金
- 被相続人の判断能力が低下していた時期の出金
その他の有効な証拠
- 介護・医療記録
被相続人のカルテや要介護認定の資料など。当時の判断能力の程度を証明するのに役立ちます。 - 被相続人の日記やメモ
財産管理に関する記述が残っている場合があります。 - 他の親族や関係者の証言
ケアマネージャーやヘルパーなど、第三者の証言が有力な証拠となることもあります。
ステップ2:内容証明郵便による財産開示と返還の要求
証拠がある程度集まったら、まずは話し合いでの解決を目指します。しかし、直接の対話が難しい場合は、弁護士に依頼し、内容証明郵便で正式に要求を通知するのが有効です。
内容証明郵便に記載する内容
- 財産目録の開示要求
管理していた全ての財産について、詳細な目録を提示するよう求める。 - 使途不明金の説明要求
取り寄せた取引履歴を元に、具体的な日付と金額を挙げ、その使途を説明するよう求める。 - 返還の要求
不当な使い込みが確認された場合、その金銭を遺産に戻すよう(または他の相続人に支払うよう)要求する。 - 回答期限の設定
「本書面到着後2週間以内にご回答ください」など、明確な期限を設ける。 - 法的措置の示唆
誠実な対応がない場合は、遺産分割調停や訴訟などの法的手続きに移行する意思があることを伝える。
この通知を送ることで、相手にプレッシャーを与え、問題解決に向けた交渉のテーブルについてもらう効果が期待できます 。
ステップ3:法的手続きによる解決
相手が話し合いに応じない、あるいは使い込みを認めない場合は、裁判所を通じた法的な手続きを検討します。
遺産分割調停
家庭裁判所で、調停委員という中立な第三者を交えて話し合う手続きです。 調停の中で、財産の使い込み(不当利得)についても議題として取り上げ、相手に説明を求めることができます。ここで相手が使い込みを認めれば、その分を考慮した遺産分割案で合意を目指します 。
不当利得返還請求訴訟
調停でも解決しない場合や、使い込みの事実を断固として争う場合は、地方裁判所に「不当利得返還請求訴訟」を提起します 。
これは、法律上の原因なく利益を得た者(使い込みをした兄弟)に対し、損失を受けた者(あなた)がその返還を求める裁判です。この訴訟では、ステップ1で集めた証拠に基づき、あなたが相手の不当な利得を立証する必要があります。
なぜ迅速な行動が重要なのか?「時効」のリスク
財産の使い込みに関する返還請求権には「時効」があります。
相続開始(親の死亡)後の使い込み
⇒ 権利を行使できることを知った時から5年、または不法行為の時から20年
相続開始前(親の生前)の使い込み
⇒ 権利を行使できることを知った時から5年、または不法行為の時から10年
「いつか解決すればいい」と問題を先送りにしていると、証拠が散逸するだけでなく、最悪の場合、時効によって財産を取り戻す権利そのものを失ってしまう可能性があります。
財産の使い込み問題を弁護士に相談するメリット
財産の使い込み問題は、相続トラブルの中でも特に立証が難しく、感情的な対立も激しくなりがちです。専門家である弁護士に依頼することで、以下のような強力なサポートが受けられます。
- 証拠収集の強力なサポート
弁護士会照会制度などを利用し、個人では開示を拒否されがちな資料(医療記録など)の収集をスムーズに進めることができます。 - 交渉の代理による精神的負担の軽減
あなたの代理人として、相手との全ての交渉を行います。顔も見たくない相手と直接対峙するストレスから解放されます 。 - 法的な根拠に基づく的確な主張
集めた証拠を精査し、法的に有効な主張を組み立て、あなたの正当な権利を守ります。 - 調停・訴訟へのスムーズな移行
交渉が決裂した場合でも、そのまま調停や訴訟手続きの代理人として、最後まであなたのために戦います 。
まとめ:泣き寝入りせず、専門家と共に正当な権利を取り戻す
兄弟による財産の使い込みは、許される行為ではありません。精神的に非常につらい状況だとは思いますが、決して泣き寝入りする必要はありません。
重要なのは、感情的にならず、客観的な証拠を集め、法的な手続きに沿って冷静に対処することです。そして、その複雑で困難なプロセスを乗り越えるためには、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
当事務所では、相続問題に関する初回のご相談は無料で承っております。あなたの状況を詳しくお伺いし、財産を取り戻すための最善の方法を一緒に考えます。一人で抱え込まず、まずは私たちにご相談ください。