【ご相談事例】長女が夫の預金を全て自分の口座に…遺産分割でお困りの方へ

📄 ご相談の背景

田中 静江(たなか しずえ)さん(仮名)からのご相談です。

昨年、長年連れ添った夫の浩一さん(仮名)に先立たれ、静江さんは一人暮らしになりました。相続人は、静江さんと、近くに住む長女の美咲さん(仮名)、そして海外で暮らす二女の由香さん(仮名)の3人です。

悲しみが癒えない中、お墓をどうするか、今後の生活費をどうするかなど、考えなければならないことは山積みでした。相続手続きも進めなければ、と思い、まずは夫が遺したものを確認しようとしました。

しかし、夫が貸金庫に保管していたはずの通帳や権利証などの資料は、いつの間にか長女の美咲さんが全て持ち去っていました。さらに、問い詰めたところ、夫名義の預貯金はすべて解約され、美咲さん個人の口座に送金してしまったと言うのです。「私が管理しておいてあげるから大丈夫」と美咲さんは言いますが、静江さんや二女の由香さんには一切説明がありません。

このままでは、夫が遺してくれた大切な財産が、遺産分割協議を経ずに使い込みをされてしまう。頼りの長女に裏切られたような気持ちと、遠方に住む二女への負い目、そして将来への底知れぬ不安に苛まれた静江さんは、当事務所の扉を叩かれました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「娘とはいえ、長女が勝手に父の預金を自分の口座に移してしまうことは、法的に許されるのでしょうか?」

回答:
いいえ、決して許されることではありません。お父様が亡くなられた後、その預貯金などの遺産は、遺産分割が終わるまで相続人全員(この場合は静江様、美咲さん、由香さんの3名)の共有財産となります。

たとえ親子であっても、他の相続人の同意なく、一人の相続人が遺産を独占したり、自分の口座に移したりすることは法的に認められません。美咲さんの行為は、他の相続人の権利を侵害するものです。まずは、ご自身の主張が法的に正当なものであるということを、しっかりと認識してください。

質問2:「長女の口座に移されてしまった預金を取り戻し、きちんと3人で分けるには、どうすればよいのでしょうか?」

回答:
お父様が亡くなった後に長女の美咲さんが無断で自分の口座に預金を移したのは、相続財産の「無断な持ち出し(使い込み)」にあたる行為です。

この持ち出された預金を取り戻し、きちんと3人で分けるためには、遺産分割協議や調停の場で、「その預金は遺産として現に存在しているもの」として扱うよう強く主張していくことになります。

つまり、「美咲さんの口座に移動しているだけで、法的には依然として分割対象の遺産である」という考え方です。遺産分割の際には、その全額を「本来あるべき遺産」に含めて、3人それぞれの公平な取り分を計算し直すことを求めていきます。もし話し合いで解決しない場合は、美咲さんに対して不当利得返還請求訴訟を起こし、法的に返還を求めることも可能です。

いずれにせよ、主張を裏付けるためには、金融機関から取引履歴を取り寄せて資金の流れを正確に証明する必要があり、専門的な対応が不可欠です。

質問3:「もし長女が話し合いに応じてくれない場合、どうなってしまうのでしょうか?遠方に住む二女もいるので、手続きを進めるのが不安です。」

回答:
当事者間での話し合いが難しい場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停とは、裁判官と民間の有識者から選ばれる調停委員が間に入り、相続人双方の主張を公平な立場で聞きながら、話し合いによる円満な解決を目指す手続きです。

感情的になりがちな家族間の話し合いも、中立な第三者が関わることで冷静に進められるケースが多くあります。また、海外にお住まいの二女の由香さんも、現在では電話会議システムやWeb会議システムを利用して調停に参加できるため、遠方にお住まいでも心配は要りません。

調停を有利に進めるためには、ご自身の主張を法的に構成し、それを裏付ける証拠を的確に提出することが不可欠です。弁護士が代理人として調停に出席し、静江様のお気持ちと法的な権利をしっかりと主張していくことで、納得のいく解決を目指すことができます。


📌 この事例のポイント整理

  • 亡くなった方の遺産は、遺産分割が完了するまで相続人全員の「共有財産」です。
  • 一人の相続人が、他の相続人の同意なく遺産を自分のものにすること(無断な使い込み)は認められません。
  • 勝手に持ち出された預金も、遺産分割の際には「本来あるべき遺産」として分け方の対象に含めるよう主張できます。
  • 当事者同士での解決が困難な場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」という話し合いの手続きを利用できます。

📣 弁護士からのアドバイス:「家族だから」が、かえって問題を複雑にします

相続トラブルは、「家族だから大丈夫だろう」「親子なのだから、きちんと話せばわかるはず」といった気持ちが、かえって問題をこじらせてしまう典型的な例です。特に、ご相談のケースのように特定の相続人が遺産を管理し始めると、他の相続人は「何をされているか分からない」という不信感を募らせ、感情的な対立に発展しやすくなります。

「私が管理する」という言葉の裏で、遺産が勝手に費消されてしまうケースは後を絶ちません。一度こじれてしまった親族関係を修復するのは、非常に困難です。

そうなる前に、相続が発生したら、まずは専門家である弁護士に相談し、法に則った正しい手順で手続きを進めることが、結果的に「円満な解決」への一番の近道となります。ご自身の正当な権利を守り、不要な争いを避けるためにも、できるだけ早い段階でご相談いただくことを強くお勧めします。


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