ご相談事例

【ご相談事例】「長男に全財産を相続させたい」…後々のトラブルを防ぐ遺言書の作り方とは?

2025-07-31

📄 ご相談の背景

今回ご相談に来られたのは、70代の鈴木様(仮名)です。鈴木様は、ご自身の事業を長年支え、現在も同居して身の回りの世話をしてくれている長男の太郎さん(仮名)に、ご自身の財産である不動産の共有持分と預貯金2,000万円のすべてを相続させたい、と固い決意をお持ちでした。

鈴木様には、遠方に嫁いで家庭を築いている長女の花子さん(仮名)もいらっしゃいます。花子さんとは良好な関係を築いており、花子さん自身も「家や事業のことはお兄ちゃんが継ぐのが当たり前よ」と普段から話しているとのこと。そのため、鈴木様は「花子もきっと納得してくれるはずだ」とお考えでした。

しかし、ご友人の相続で揉めた話を聞いたことをきっかけに、本当にご自身の希望通りの遺言書を作成して、それだけで万事うまくいくのだろうかと、一抹の不安を覚えるようになりました。特に、法律で定められた相続人の最低限の取り分である「遺留分」という言葉を耳にし、このまま自分の想いだけで進めてしまって、太郎さんと花子さんの兄妹仲に亀裂が入るような事態にならないか、と心配になり、当事務所へご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「『全財産を長男の太郎に相続させる』という内容の遺言書を作成することは、法的に可能なのでしょうか?」

回答:

はい、ご自身の財産を誰に、どのように相続させるかについては、遺言書によって自由に定めることが可能です。これを「遺言自由の原則」といいます。したがって、「全財産を長男の太郎さんに相続させる」という内容の遺言書を作成すること自体は、法的に全く問題なく、有効です。まずはこの点でご安心ください。ご自身の想いを形にするための第一歩として、遺言書は非常に強力な法的手段となります。

質問2:「では、その遺言書さえ作っておけば、将来、長女の花子から何か言われる可能性は一切ないと考えてよいのでしょうか?『遺留分』という制度が気になっています。」

回答:

鈴木様がご心配されている通り、注意すべき点がございます。遺言書が法的に有効であることと、他の相続人から何も主張されないこととは別の問題です。

お子様である長男の太郎さんと長女の花子さんには、それぞれ「遺留分(いりゅうぶん)」という、法律によって保障された最低限の遺産取得分があります。今回のケースでは、花子さんは法律で定められた相続分(法定相続分)のさらに半分(遺産の1/8)を遺留分として受け取る権利を持っています。

鈴木様が作成された遺言書の内容が、この花子さんの遺留分を侵害するものであった場合、花子さんは遺言によって全財産を受け取った太郎さんに対して、「遺留分侵害額請求」という形で、侵害された分に相当する金銭を支払うよう請求することができます。もちろん、花子さんがこの権利を行使するかどうかはご本人の意思次第ですが、相続が発生した際に、お金の話が絡むと、それまでの関係性が変わってしまう可能性は残念ながら否定できません。

質問3:「長男と長女の間で争いが起きないようにするためには、具体的にどのような対策をすれば良いのでしょうか?想いを伝える良い方法はありますか?」

回答:

将来の紛争を未然に防ぎ、鈴木様の想いを円満に実現するためには、いくつかの重要な対策があります。

一つは、遺留分について予め配慮した内容の遺言書を作成することです。例えば、預貯金の一部を花子さんが取得できるように指定するなど、遺留分を侵害しない、あるいはそれに近い財産を渡す形が考えられます。

そして、それ以上に重要になるのが、遺言書の「付言事項(ふげんじこう)」を活用することです。付言事項には法的な拘束力はありませんが、「なぜ長男に全財産を相続させたいのか」という鈴木様の本当の想いや、長男・長女それぞれへの感謝の気持ちなどを、ご自身の言葉で書き記すことができます。

「事業を守り、最後まで生活を支えてくれた太郎に財産を託したい」「花子には生前こういう援助をしてきたし、何より幸せな家庭を築いてくれていることを誇りに思う」といったメッセージを残すことで、単なる財産の分配指示書ではない、「家族への最後の手紙」として、花子さんの心情に訴えかけ、遺留分侵害額請求という権利の行使を思いとどまらせる効果が期待できます。どのような文面にするか、どの程度の財産を配分すればご家族が納得しやすいかなど、専門的な知見を踏まえた作成が極めて重要になりますので、ぜひ弁護士にご相談いただきたい部分です。


📌 この事例のポイント整理

  • 遺言書によって、特定の相続人に全財産を相続させるなど、財産の分け方を自由に定めることは原則として可能。
  • ただし、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、親)には、遺言によっても奪われない最低限の取り分「遺留分」が保障されている。
  • 遺留分を侵害する内容の遺言も無効ではないが、他の相続人から金銭の支払いを請求(遺留分侵害額請求)されるリスクがある。
  • 将来の紛争を防ぐためには、遺留分に配慮した遺産分割や、感謝や理由を伝える「付言事項」を遺言書に盛り込むことが非常に有効。

📣 弁護士からのアドバイス:想いを伝える「付言事項」が、円満相続の鍵です

遺言書は、単に財産をどう分けるかを指示するだけの事務的な書類ではありません。残される大切なご家族へ宛てた、「最後のメッセージ」としての役割も持っています。

特に、今回のご相談のように、特定の相続人へ多くの財産を遺したいとお考えの場合、なぜそのような内容の遺言を遺すのか、その「理由」と「想い」を伝えることが、法的な規定以上に重要になることが少なくありません。

「うちは家族の仲が良いから大丈夫」と思っていても、いざ相続が現実のものとなると、それまで表に出なかった感情や、配偶者など周囲の意見も絡み、予期せぬトラブルに発展してしまうケースは、残念ながら数多く見てきました。

法的に有効な遺言書を作成するのはもちろんのこと、ご自身の真意を「付言事項」という形でしっかりと記し、残されたご家族が円満に相続手続きを進められるよう、万全の準備をしておくこと。それが、ご自身の想いを実現し、ご家族を守るための最善の方法です。


🏢 遺言書作成のご相談は、大東法律事務所へ

遺言書の作成は、ご自身の人生の集大成であり、ご家族への想いを形にする大切な作業です。しかし、法律的な知識が不十分なまま作成してしまうと、かえってご家族間に争いの種を残してしまうことにもなりかねません。

大東法律事務所では、ご相談者様のお気持ちを丁寧に伺い、法的なリスクを洗い出した上で、将来の紛争を予防するための最適な遺言書作成をサポートいたします。

当事務所では、相続に関する初回のご相談は無料となっております。

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【ご相談事例】亡き父が残した連帯保証人の地位。相続放棄をしたら、死亡保険金も受け取れないの?

2025-07-31

📄 ご相談の背景

佐藤 愛美(さとう まなみ)さん(仮名)からのご相談です。

先日、父である幸雄さん(仮名)を亡くし、母の恵子さん(仮名)と共に、悲しみに暮れる間もなく葬儀などの手続きに追われる毎日を送っていました。そんな中、愛美さんの心をさらに重くする大きな不安が頭をよぎります。それは、父が生前、母の弟である鈴木健司さん(仮名)のアパートの連帯保証人になっていたことです。

健司さんは以前にも家賃を滞納したことがあり、保証会社から父のもとに連絡が来ていたのを愛美さんは覚えていました。「もし、また滞納したら…」。父が亡くなった今、その重い責任は誰が負うのでしょうか。

そんな矢先、保険会社から連絡があり、父が受取人となっていた入院給付金や、母が受取人に指定されている死亡保険金などが支払われることを知りました。「連帯保証人の義務は引き継ぎたくない。でも、相続放棄をしたら、母の今後の生活の支えとなるはずの保険金まで受け取れなくなってしまうのでは…?」

父を亡くした悲しみと、差し迫る経済的な不安。相反する問題に板挟みになった愛美さんは、どうすれば良いか分からなくなり、当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「父が負っていた連帯保証人としての義務は、相続人である母や私が引き継がなければならないのでしょうか?」

回答:
はい、残念ながら、連帯保証人としての義務(保証債務)も、借金と同じ「マイナスの財産」として相続の対象となります。何もしなければ、原則として法定相続分に応じて、お母様と愛美さんがその義務を引き継ぐことになります。

しかし、ご安心ください。このような場合に備えて、法律には「相続放棄」という手続きが用意されています。家庭裁判所に申述(申立て)をすることで、初めから相続人ではなかったことになり、借金や連帯保証債務を含む一切の権利と義務を引き継ずに済みます。まずは、こうした解決の道筋があることを知り、少し落ち着いて今後のことを考えていきましょう。

質問2:「相続放棄をすると、父の死亡によって受け取れるはずの死亡保険金や入院給付金なども、すべて受け取れなくなってしまうのでしょうか?」

回答:
非常に重要なご質問です。結論から言うと、「受け取れるもの」と「受け取れなくなるもの」があります。重要なのは、そのお金が「誰の財産か」という点です。

  • 死亡保険金(受取人:お母様)→ 受け取れます。
    これは相続財産ではなく、保険契約に基づいて「受取人であるお母様固有の財産」と見なされるため、お母様が相続放棄をしても問題なく受け取ることができます。
  • 入院給付金(受取人:お父様)→ 受け取れません。
    こちらは受取人が亡きお父様本人であるため、お父様の財産(相続財産)となります。したがって、相続放棄をすると、この給付金を受け取る権利も放棄することになります。

ご相談の「介護保険料」とある任意保険についても、受取人が誰に指定されているかを確認する必要があります。もしお父様本人や「法定相続人」と指定されている場合は相続財産となり、相続放棄をすると受け取れません。このように、判断が難しい部分があるため、専門家による正確な財産調査が不可欠です。

質問3:「もし母だけが相続して連帯保証人になった後、叔父が家賃を滞納したらどうなりますか?母が自己破産すれば支払いを免れ、私に請求が来ることはありますか?」

回答:
もしお母様が相続を選択した場合、お父様の連帯保証人としての地位をすべて引き継ぐことになります。連帯保証人は、単なる保証人とは異なり、万が一叔父様が家賃を滞納した場合、大家さんや保証会社から滞納家賃の全額を直接請求される可能性があります。

お母様の資力で支払えない場合、自己破産という選択肢も法的には考えられます。しかし、自己破産には一定の財産を手放さなければならないなどのデメリットもあります。

ご質問の「愛美さんへの請求」についてですが、愛美さんご自身がきちんと相続放棄の手続きを完了していれば、お母様が相続した後に発生した支払いについて、愛美さんに請求が来ることは一切ありません。相続放棄をすることで、将来にわたる不安の連鎖を断ち切ることができるのです。


📌 この事例のポイント整理

  • 賃貸借契約の連帯保証人の地位は、借金と同様に相続の対象となる「マイナスの財産」です。
  • 相続放棄をすれば、プラスの財産(預貯金、不動産など)も、マイナスの財産(借金、保証債務など)も、一切引き継ぐ必要がなくなります。
  • 死亡保険金は、受取人に指定された人の「固有の財産」であるため、相続放棄をしても受け取ることが可能です。
  • 相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所で行う必要があり、迅速な判断が求められます。

📣 弁護士からのアドバイス:「知らなかった」では済まされない、連帯保証債務の相続

今回のように、亡くなった方が第三者の連帯保証人になっていたというケースは、決して珍しくありません。連帯保証債務は、通常の借金と違って故人の通帳や書類からは見つけにくく、亡くなってしばらくしてから突然、債権者(大家さんや保証会社)からの請求で発覚することも多い、非常に厄介な問題です。

相続というと、ついプラスの財産に目が行きがちですが、相続で最も注意すべきは、こうした「見えない負債」なのです。

相続放棄には「3ヶ月」という短い期限(熟慮期間)があります。この間に、亡くなった方の財産をすべて調査し、相続するか放棄するかを決めなければなりません。しかし、悲しみの中で、また仕事や日々の生活を送りながら、ご自身だけで正確な財産調査を行うのは大変な困難を伴います。

「保険金は受け取りたい、でも借金は引き継ぎたくない」というお気持ちは、誰もが抱くものです。どの財産が相続の対象となり、どうすればご自身の権利を守れるのか。判断に迷われたら、手遅れになる前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの状況に合わせた最善の解決策を、一緒に見つけていきましょう。


🏢 相続のご相談は、大東法律事務所へ

突然の相続発生で、何から手をつけて良いか分からない、予期せぬ借金や保証債務が見つかって不安だ、という方は少なくありません。特に相続放棄には時間的な制約があり、ご自身だけで判断するのは大きなリスクを伴います。問題を一人で抱え込まず、まずは専門家である弁護士にお話しください。あなたの不安を解消し、最善の未来へ進むためのお手伝いをさせていただきます。

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【ご相談事例】長女が夫の預金を全て自分の口座に…遺産分割でお困りの方へ

2025-07-31

📄 ご相談の背景

田中 静江(たなか しずえ)さん(仮名)からのご相談です。

昨年、長年連れ添った夫の浩一さん(仮名)に先立たれ、静江さんは一人暮らしになりました。相続人は、静江さんと、近くに住む長女の美咲さん(仮名)、そして海外で暮らす二女の由香さん(仮名)の3人です。

悲しみが癒えない中、お墓をどうするか、今後の生活費をどうするかなど、考えなければならないことは山積みでした。相続手続きも進めなければ、と思い、まずは夫が遺したものを確認しようとしました。

しかし、夫が貸金庫に保管していたはずの通帳や権利証などの資料は、いつの間にか長女の美咲さんが全て持ち去っていました。さらに、問い詰めたところ、夫名義の預貯金はすべて解約され、美咲さん個人の口座に送金してしまったと言うのです。「私が管理しておいてあげるから大丈夫」と美咲さんは言いますが、静江さんや二女の由香さんには一切説明がありません。

このままでは、夫が遺してくれた大切な財産が、遺産分割協議を経ずに使い込みをされてしまう。頼りの長女に裏切られたような気持ちと、遠方に住む二女への負い目、そして将来への底知れぬ不安に苛まれた静江さんは、当事務所の扉を叩かれました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「娘とはいえ、長女が勝手に父の預金を自分の口座に移してしまうことは、法的に許されるのでしょうか?」

回答:
いいえ、決して許されることではありません。お父様が亡くなられた後、その預貯金などの遺産は、遺産分割が終わるまで相続人全員(この場合は静江様、美咲さん、由香さんの3名)の共有財産となります。

たとえ親子であっても、他の相続人の同意なく、一人の相続人が遺産を独占したり、自分の口座に移したりすることは法的に認められません。美咲さんの行為は、他の相続人の権利を侵害するものです。まずは、ご自身の主張が法的に正当なものであるということを、しっかりと認識してください。

質問2:「長女の口座に移されてしまった預金を取り戻し、きちんと3人で分けるには、どうすればよいのでしょうか?」

回答:
お父様が亡くなった後に長女の美咲さんが無断で自分の口座に預金を移したのは、相続財産の「無断な持ち出し(使い込み)」にあたる行為です。

この持ち出された預金を取り戻し、きちんと3人で分けるためには、遺産分割協議や調停の場で、「その預金は遺産として現に存在しているもの」として扱うよう強く主張していくことになります。

つまり、「美咲さんの口座に移動しているだけで、法的には依然として分割対象の遺産である」という考え方です。遺産分割の際には、その全額を「本来あるべき遺産」に含めて、3人それぞれの公平な取り分を計算し直すことを求めていきます。もし話し合いで解決しない場合は、美咲さんに対して不当利得返還請求訴訟を起こし、法的に返還を求めることも可能です。

いずれにせよ、主張を裏付けるためには、金融機関から取引履歴を取り寄せて資金の流れを正確に証明する必要があり、専門的な対応が不可欠です。

質問3:「もし長女が話し合いに応じてくれない場合、どうなってしまうのでしょうか?遠方に住む二女もいるので、手続きを進めるのが不安です。」

回答:
当事者間での話し合いが難しい場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停とは、裁判官と民間の有識者から選ばれる調停委員が間に入り、相続人双方の主張を公平な立場で聞きながら、話し合いによる円満な解決を目指す手続きです。

感情的になりがちな家族間の話し合いも、中立な第三者が関わることで冷静に進められるケースが多くあります。また、海外にお住まいの二女の由香さんも、現在では電話会議システムやWeb会議システムを利用して調停に参加できるため、遠方にお住まいでも心配は要りません。

調停を有利に進めるためには、ご自身の主張を法的に構成し、それを裏付ける証拠を的確に提出することが不可欠です。弁護士が代理人として調停に出席し、静江様のお気持ちと法的な権利をしっかりと主張していくことで、納得のいく解決を目指すことができます。


📌 この事例のポイント整理

  • 亡くなった方の遺産は、遺産分割が完了するまで相続人全員の「共有財産」です。
  • 一人の相続人が、他の相続人の同意なく遺産を自分のものにすること(無断な使い込み)は認められません。
  • 勝手に持ち出された預金も、遺産分割の際には「本来あるべき遺産」として分け方の対象に含めるよう主張できます。
  • 当事者同士での解決が困難な場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」という話し合いの手続きを利用できます。

📣 弁護士からのアドバイス:「家族だから」が、かえって問題を複雑にします

相続トラブルは、「家族だから大丈夫だろう」「親子なのだから、きちんと話せばわかるはず」といった気持ちが、かえって問題をこじらせてしまう典型的な例です。特に、ご相談のケースのように特定の相続人が遺産を管理し始めると、他の相続人は「何をされているか分からない」という不信感を募らせ、感情的な対立に発展しやすくなります。

「私が管理する」という言葉の裏で、遺産が勝手に費消されてしまうケースは後を絶ちません。一度こじれてしまった親族関係を修復するのは、非常に困難です。

そうなる前に、相続が発生したら、まずは専門家である弁護士に相談し、法に則った正しい手順で手続きを進めることが、結果的に「円満な解決」への一番の近道となります。ご自身の正当な権利を守り、不要な争いを避けるためにも、できるだけ早い段階でご相談いただくことを強くお勧めします。


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相続問題は、法律だけでなく、感情も複雑に絡み合うため、一人で抱え込むのは非常にお辛いものです。私たちが法的観点から状況を整理し、あなたの代理人として、正当な権利の実現に向けて全力でサポートいたします。

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【ご相談事例】姉の死後1年、突然届いた借金の請求書。もう相続放棄はできない?

2025-07-29

📄 ご相談の背景

佐藤忠さん(仮名)は、定年退職後、穏やかな毎日を過ごしていました。忠さんには仁美さん(仮名)という姉がいましたが、50代の頃に親の葬儀で顔を合わせたのが最後。どこでどうしているのかも全く知らない状態が何十年も続いていました。

そんなある日、忠さんのもとに、見知らぬ会社から一通の請求書が届きます。そこには「被相続人佐藤仁美様 相続人 佐藤忠様」と書かれていました。驚いて請求元に電話で問い合わせると、信じられない事実が告げられます。お姉様は、すでに1年以上も前に亡くなっていたこと、そして、借金を残していたこと。「法律上、あなたが相続人なので、この借金を支払ってください」と、事務的な口調で説明されました。

全く知らされることのなかった姉の死、そして突然降りかかってきた借金の存在。何十年も会っていない姉のために、なぜ自分が責任を負わなければならないのか。途方に暮れた忠さんは、どうすればよいか分からず、当事務所へご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「何十年も会っていない姉の借金を、私が支払わなければならないのでしょうか?」

回答:
いいえ、法的な手続きを取ることで、支払い義務を免れることができます。

まず、法律上の関係でいえば、お姉様にお子さんがいらっしゃらない場合、ご両親もすでにお亡くなりであれば、ご兄弟である忠さんが「法定相続人」となります。そのため、債権者は法律に従って、相続人である忠さんに請求をしてきているのです。

しかし、ご安心ください。このような場合に備え、法律には「相続放棄」という制度が用意されています。家庭裁判所で相続放棄の手続きをすれば、「初めから相続人ではなかった」とみなされます。相続放棄の手続きをすると、お姉様の借金のようなマイナスの財産だけでなく、不動産や預金といったプラスの財産も含め、すべての遺産を一切引き継がないことになります。その結果、借金の支払い義務からも完全に免れることができるのです。


質問2:「相続放棄は亡くなってから3ヶ月以内にしないといけないと聞きました。姉の死亡から1年以上経っていますが、もう手遅れですか?」

回答:
いいえ、今回のケースでは、今からでも相続放棄が認められる可能性が非常に高いです。

おっしゃる通り、相続放棄の手続きには、「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼ばれる期間制限があります。原則は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています。

重要なのは、この期間がスタートする「起算点」です。多くの方が「亡くなった時から3ヶ月」と誤解されていますが、正しくは「①被相続人が亡くなった事実」と「②それによって自分が相続人になった事実」の両方を知った時から3ヶ月、とされています。

忠さんの場合、債権者からの請求書が届いたことで、初めてお姉様の死亡と、ご自身が相続人であることを知ったわけですから、その請求書が届いた日が熟慮期間のスタート地点(起算点)となります。したがって、そこから3ヶ月以内に手続きをすれば、相続放棄は十分に可能です。ただし、裁判所に対して「なぜ死亡から1年以上も経過してからの手続きになったのか」という事情を、説得力をもって説明する必要があります。


質問3:「他に相続人がいる可能性はないのでしょうか?手続きは具体的にどう進めれば良いですか?」

回答:
まず、「相続人調査」を行います。お姉様の出生から死亡までの全ての戸籍謄本等を取り寄せ、お姉様にお子さん(忠さんから見て甥や姪)が本当にいないのか、他に相続人となるべき方がいないかを確定させます。これは、相続放棄の手続きを正確に進める上で不可欠な作業です。

相続人がご自身であると確定した場合、家庭裁判所に提出する「相続放棄の申述書」を作成します。その際、単に書類を提出するだけではありません。なぜ熟慮期間の起算点が「請求書の到着日」なのかを、資料を添えて法的に明確に主張します。具体的には、「長年疎遠であったため、死亡の事実を知り得なかったこと」「債権者からの通知で初めて相続人であることを認識したこと」などを、裁判官に分かりやすく、かつ説得力をもって説明する書面を作成します。

このような専門的な手続きを弁護士に任せることで、裁判所への説明がスムーズに進み、相続放棄が認められる可能性を最大限に高めることができます。


📌 この事例のポイント整理

  • 長年疎遠だった親族でも、法律上の相続人となり、ある日突然、借金の返済義務を負うことがあります。
  • 相続放棄の期間(熟慮期間)は原則「自分が相続人になったことを知った時」から3ヶ月です。
  • 被相続人の死亡から長期間が経過していても、「知らなかった」ことに正当な理由があれば、相続放棄が認められる可能性は十分にあります。
  • 確実な相続放棄のためには、弁護士による正確な相続人調査と、熟慮期間の起算点に関する裁判所への説得力のある主張が極めて重要です。

📣 弁護士からのアドバイス:「死亡から3ヶ月」は絶対ではない。諦める前にまず専門家にご相談を

相続放棄に関して、「被相続人の死亡から3ヶ月」という期間が、多くの方にとって一種の「壁」のように感じられているようです。今回のケースのように、死亡から1年以上が経過していると、「もう手遅れだ」と諦めてしまい、本来支払う必要のない借金を抱えてしまう方も少なくありません。

しかし、法律が定める熟慮期間は、もっと柔軟に解釈されるべきものです。重要なのは「いつ亡くなったか」だけでなく、「いつ自分が相続人だと知ったか」という点です。この「知った時」を客観的な証拠で証明できれば、相続放棄が認められる道は残されています。

ご自身の判断で「もうダメだ」と決めつけてしまうのは、非常にもったいないことです。インターネット上の情報だけでは、ご自身の状況に当てはまるかどうかの正確な判断は困難です。少しでも可能性があると感じたら、諦める前に、まずは専門家である弁護士にご相談ください。


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【ご相談事例】相続人の一人と連絡が取れない…どうやって遺産分割を進める?

2025-07-29

📄 ご相談の背景

お姉様・美沙さんを亡くされた佐藤悦子さん(仮名)。悲しみに暮れる間もなく、預金や株式、不動産といった遺産の相続手続きが始まりました。

相続人は悦子さんの他に、もう一人の姉妹と11名もの甥姪たち。人数が多いことに不安を感じつつも、ほとんどの親族とはすぐに連絡がつき、皆協力的だったため、悦子さんは少しだけ安堵していました。

しかし、その安堵も束の間、甥の一人である山田五郎さん(仮名)だけが、どうしても連絡が取れないという壁に突き当たります。電話はつながらず、手紙を送っても「宛先人不明」で戻ってきてしまう状況。一体どこで何をしているのか、誰も五郎さんの現在の状況を知りませんでした。

「相続人全員の合意がないと、遺産分割は進められないらしいけど、このままではどうにもならない…」。焦りと不安が募る中、当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「相続人が一人でも欠けたままでは、本当に遺産分割協議はできないのでしょうか?」

回答:
はい、その通りです。遺産分割協議は、相続人全員が参加し、全員で合意することが法律上の大原則となります。たとえ長年音信不通であったり、行方が分からなかったりする方がいても、その方を抜きにして勝手に手続きを進めることはできません。もし行方不明の相続人を除外して作成した遺産分割協議書があっても、それは法的に無効となってしまいます。

しかし、ご安心ください。法律には、このような八方ふさがりの状況を打開するための制度がきちんと用意されています。諦める必要はありません。

質問2:「行方不明の相続人がいる場合、具体的にどのような手続きを取れば、遺産分割を進められるのでしょうか?」

回答:
まず、「戸籍の附票(こせきのふひょう)」などをたどって、行方不明の方の現在の住所地を徹底的に調査することから始めます。この調査によって、転居先が判明し、連絡がつくケースも少なくありません。

それでも所在が確認できない場合、主に次の3つの法的な手続きを検討することになります。

1.失踪宣告の申立
7年以上もの間、生死が不明な場合に、家庭裁判所に申し立てる手続きです。これが認められると、その方は法律上「死亡した」とみなされ、その方のお子さんなどが代わって遺産分割協議に参加します。

2.不在者財産管理人選任の申立て
行方不明ではあるものの、失踪宣告の要件を満たさない場合に利用できる手続きです。家庭裁判所に行方不明の方の「代理人」を選任してもらい、その代理人を交えて遺産分割協議を進めます。

3.公示送達による遺産分割審判の申立て
家庭裁判所に遺産の分け方を決めてもらう手続きです。但し、分割方法に争いがあるような場合には申立が却下される場合もあります。また、遺産に不動産がある場合には、不動産鑑定士による鑑定が求められ、鑑定費用(数十万円)が必要になる可能性があります。

どの制度を選択すべきかは、行方不明の期間や遺産の内容、ご親族の状況によって異なり、専門的な判断が求められます。

質問3:「家庭裁判所での手続きは、自分たちで進められますか?また、手続き後の協議で注意すべき点はありますか?」

回答:
これらの手続きは、いずれも家庭裁判所での手続きが必要となり、申立てのためには様々な書類を収集・作成する必要があります。ご自身で進めるには、多くの時間と労力がかかる可能性があり、法的な判断に迷う場面も少なくありません。

また、手続き後の注意点も重要です。「失踪宣告」の場合は、新たに相続人となった方と一から協議を始める必要がありますし、「不在者財産管理人の選任」の場合は、選ばれた管理人は行方不明の方の利益を守る立場のため、その方の法定相続分をきちんと確保した分割案を考える必要があります。

このように、どの手続きを選択するかという入口の判断から、その後の複雑な利害調整まで、専門的な知識が求められる場面が多々あります。弁護士は、ご状況にとって最適な法的手続きを見極め、円滑な解決に至るまでのお手伝いをすることができます。


📌 この事例のポイント整理

  • 遺産分割協議は、相続人全員の参加が絶対条件であり、一人でも欠けると手続きを進められません。
  • 行方不明の相続人がいる場合、まずは弁護士による戸籍等の調査で、徹底的に所在を確認することが第一歩です。
  • 調査しても見つからない場合、「失踪宣告」や「不在者財産管理人の選任」、「遺産分割審判」といった法的手続きで解決を図ります。
  • どの手続きが最適かの判断や、その後の複雑な交渉には専門的な知識が不可欠であり、弁護士に相談することで円滑な解決が期待できます。

📣 弁護士からのアドバイス:相続人の行方不明は、誰にでも起こりうる問題です

「相続人が多くて、中には疎遠な人もいる」。これは、決して珍しいケースではありません。今回の事例のように、相続関係が複雑化する中で、一部の相続人と連絡が取れなくなってしまうことは、誰にでも起こりうる問題です。

多くの方が、「話し合えば何とかなるだろう」と考えがちですが、法的な手続きは、感情とは別の次元で、厳格なルールに則って進められます。行方不明の方が一人いるだけで、預金の解約も、不動産の名義変更も、すべてが凍結されてしまうのです。

もし相続人の中に連絡が取れない方がいると判明した場合は、ご自身で悩み続けるのではなく、できるだけ早く専門家にご相談ください。状況を正確に把握し、法的な見通しを立て、計画的に手続きを進めることが、問題を深刻化させないための最善の策です。一人で抱え込まず、まずは専門家に現状をお話しいただくことが、解決への確かな第一歩となります。


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相続人の中に行方不明の方がいて遺産分割が進まない、相続手続きが複雑で何から手をつけていいか分からないなど、お一人で悩んでいませんか。

大東法律事務所では、今回のような行方不明の相続人がいるケースにも豊富な経験と実績がございます。ご依頼者様のお気持ちに寄り添いながら、最適な法的手続きを選択・実行し、円満な解決まで責任を持ってサポートいたします。

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【ご相談事例】長年住んだ親の家。相続で他の相続人から高額な代償金を請求されてお悩みの方へ

2025-07-29

📄 ご相談の背景

山田一郎さん(仮名)は、ご結婚されてから約20年間、お父様名義のご実家でご両親と共に暮らしてきました。数年前には、ご両親が快適に過ごせるようにと、ご自身の貯金から数百万円を投じてリフォームも行いました。一郎さんにとっては、家族との思い出が詰まった、かけがえのない我が家でした。

しかし、先日お父様が亡くなり、相続が始まると状況は一変します。2人の妹さんから、「お兄さんだけが家に住み続けるのは不公平だ。この家を売却してお金で分けるか、さもなければ私たちの相続分に相当するお金(代償金)を支払って家を買い取ってほしい」と要求されたのです。

提示された代償金は、一郎さんにとって到底すぐには用意できない高額なものでした。長年住み慣れた家を今さら手放したくない、しかし、妹たちの言い分も全く分からないわけではない…。どうすれば自分の暮らしを守り、家族との関係を壊さずに解決できるのか、出口の見えない不安に苛まれた一郎さんは、当事務所の扉を叩かれました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「他の相続人の言う通り、私はこの家を出ていくか、高額なお金を支払うしかないのでしょうか?」

回答:
いいえ、必ずしも他の相続人の要求通りにする必要はありません。

他の相続人が主張するように、遺産であるご自宅を一郎さんが取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払うという解決方法は、遺産分割における一般的な手法の一つです。しかし、その金額は相続人全員の合意によって決めるべきものであり、一方的に提示された金額を鵜呑みにする必要は全くありません。一郎さんには、このままご自宅に住み続けながら、法的に妥当な解決策を探る権利があります。


質問2:「家の価値(評価額)はどのように決まるのでしょうか?また、私が行ったリフォームは考慮してもらえないのですか?」

回答:
家の価値は、相続人全員が合意すればその金額で問題ありませんが、意見が対立する場合は、専門家である不動産業者や不動産鑑定士に評価を依頼し、客観的な時価を算出するのが一般的です。相手方が提示する評価額が、必ずしも適正とは限りません。まずは冷静に、その金額の根拠を確認することが重要です。

また、一郎さんがご自身の費用で行ったリフォームについては、お父様の財産の維持または価値の増加に貢献したものとして、「寄与分(きよぶん)」を主張できる可能性があります。寄与分が認められれば、その分だけ一郎さんが取得できる遺産の額が増えることになり、結果的に支払う代償金の額を減額できる可能性があります。

ただし、寄与分を法的に主張し、他の相続人や家庭裁判所に認めてもらうためには、「特別な貢献」であったことを客観的な証拠(リフォームの契約書や領収書など)に基づいて具体的に証明する必要があり、そのハードルは決して低くありません。


質問3:「もし話し合いでまとまらない場合、どうなってしまうのでしょうか?どうやって話し合いを進めたらよいですか?」

回答:
当事者同士での話し合い(遺産分割協議)で合意に至らない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。調停は、裁判官や調停委員という中立な第三者を交えて、冷静に話し合いを進める手続きです。感情的な対立が激しくなってしまった場合でも、法的な論点に沿って建設的な議論ができるというメリットがあります。調停でも話がまとまらなければ、「審判」という手続きに移行し、最終的には裁判官が遺産の分け方を決定します。

まずは弁護士が代理人として他の相続人と交渉することで、一郎さんの正当な権利を法的な根拠に基づいて主張し、感情的な対立を避けながら、妥当な解決ラインを探っていくことが可能です。不動産鑑定士と連携して適正な評価額を算出したり、寄与分を的確に主張したりと、専門的なサポートを通じて、ご依頼者様にとって最善の解決を目指します。


📌 この事例のポイント整理

  • 特定の相続人が被相続人名義の不動産に住んでいる場合、他の相続人から代償金の支払いを求められるのは典型的な相続トラブルです。
  • 不動産の評価額は争いの大きな原因となります。相手の提示額を鵜呑みにせず、不動産鑑定など客観的な評価を検討することが重要です。
  • 被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合(例:家のリフォーム費用負担)、その貢献度に応じて「寄与分」が認められ、相続分が有利になる可能性があります。
  • 当事者間の話し合いで行き詰った場合は、弁護士に依頼し、法的な根拠に基づいた交渉や、家庭裁判所での調停手続きを進めることで、円満な解決につながります。

📣 弁護士からのアドバイス:「親の家」の相続は、感情と法律が交錯する問題です

今回の一郎さんのように、ご両親の家に同居・近居していた方が相続を迎えると、他の相続人から「あなたは親のそばにいて色々良くしてもらったのだから」といった感情的な反発を受け、遺産分割で厳しい要求を突きつけられるケースは決して珍しくありません。

長年住み慣れた家は、単なる財産ではなく、生活の基盤であり、家族の思い出そのものです。それを守りたいというお気持ちは、非常に切実なものです。

しかし、感情的に対立してしまうと、本来まとまるはずの話もこじれてしまい、解決がより困難になってしまいます。大切なのは、ご自身の正当な権利を冷静に主張しつつ、他の相続人にも配慮した、公平な解決策を見出すことです。そのためには、法的な見通しを正確に立て、有利な証拠を揃え、交渉の道筋を戦略的に描く必要があります。

お一人で抱え込まず、問題が深刻化する前に、ぜひ一度、相続問題に詳しい弁護士へご相談ください。専門家が間に入ることで、ご自身の心の負担を軽くし、円満な解決への最短ルートを歩むお手伝いができます。


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【ご相談事例】「全財産を兄に」という遺言書が… 私の取り分(遺留分)を請求するには?

2025-07-29

📄ご相談の背景

山田直樹さん(仮名)は先日、母・佳代様(仮名)が亡くなられ、相続人は長男の健一さん(仮名)と次男の直樹さんの2名でした。直樹さんは、生前の母との関係は良好だったと認識しており、大きな悲しみの中にいました。

しかし、四十九日を終えた頃、兄の健一さんから公正証書遺言が見つかったと告げられます。その内容を見て、直樹さんは目を疑いました。「全財産(自宅不動産、預貯金など約1億円相当)を、長男の健一に相続させる」。遺言書には、そう記されていました。ご自身の名前はどこにもなく、相続できる財産はゼロでした。

母は晩年、医師である兄を頼りにしていたことは事実です。しかし、なぜこれほどまでに極端な内容の遺言書を残したのか、全く理解できませんでした。兄と話し合おうにも、「母さんの遺志だから」の一点張りで、取り付く島もありません。「自分だけが、母から疎まれていたのだろうか…」直樹さんは、深い悲しみと兄への不信感、そして将来への大きな不安に苛まれ、藁にもすがる思いで当事務所の扉を叩かれました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「『全財産を長男に相続させる』という遺言があるため、私には一切財産をもらえないのでしょうか? 遺留分という権利があると聞いたのですが…。」

回答:
ご安心ください。そのようなことはありません。たとえ遺言書に「全財産を長男に」と書かれていたとしても、直樹さんの権利が完全になくなるわけではありません。

民法では、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して、最低限の遺産の取り分を保障する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度を定めています。これは、被相続人(今回はお母様)の意思にかかわらず、法律によって強く保護されている権利です。

今回の場合、相続人はお子様である直樹さんとお兄様の2名ですので、法定相続分はそれぞれ1/2ずつとなります。そして、遺留分はその法定相続分のさらに半分、つまり全遺産の1/4が直樹さんの権利として認められます。したがって、今回のケースでは、約2,500万円相当の遺留分を主張することが法的に可能です。まずは、ご自身に法的に守られた権利があるということを知り、心を落ち着けてください。

質問2:「兄に遺留分を請求したいのですが、具体的にどうすればいいですか?いきなり裁判になるのは避けたいのですが、内容証明郵便を送るべきなのでしょうか?」

回答:
はい、お兄様に対して、遺留分が侵害されていることを主張する意思表示(「遺留分侵害額請求」といいます)を行う必要があります。

この請求には、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」という時効があります。この時効を中断させるためにも、いつ、誰が、誰に対して請求したのかを明確な証拠として残すことが極めて重要です。そのため、配達証明付きの内容証明郵便を利用して、お兄様に請求の意思を伝えるのが最も確実で一般的な方法です。

ただし、内容証明郵便が届くことで、お相手が感情的になり、かえって話し合いがこじれてしまうケースも少なくありません。どのような文面で、どのタイミングで送るべきかについては、今後の交渉を有利に進めるための重要な戦略となりますので、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

質問3:「もし兄が話し合いに応じてくれない場合、どうなるのでしょうか? 泣き寝入りするしかないのですか?」

回答:
泣き寝入りする必要は一切ありません。お兄様が話し合いや支払いに応じない場合は、法的な手続きに移行することになります。

まずは、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」を申し立てます。調停は、裁判官や調停委員という中立な第三者を交えて話し合いを進める手続きです。裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、あくまで当事者間の合意による解決を目指す場なので、比較的柔軟な解決が期待できます。

もし、この調停でも話がまとまらない場合は、最終的に訴訟(裁判)へと移行します。訴訟では、遺産の範囲やその評価額(不動産の価値など)が争点となることも多く、法的な主張とそれを裏付ける証拠の提出が不可欠となります。

これらの法的手続きは、ご自身で進めるには多大な労力と精神的な負担がかかります。弁護士にご依頼いただければ、代理人として相手方との交渉から、調停・訴訟の対応まで一貫してサポートし、依頼者様の正当な権利が実現できるよう尽力いたします。


📌 この事例のポイント整理

  • たとえ「全財産を一人に相続させる」という遺言書があっても、他の相続人は最低限の取り分である「遺留分」を請求できます。
  • 遺留分の請求(遺留分侵害額請求)は、相続があったことを知ってから1年以内に行わないと時効で権利が消滅してしまいます。
  • 請求の意思表示は、後日の証拠とするため、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが確実です。
  • 当事者間の話し合いで解決しない場合は、「調停」や「訴訟」といった裁判所での手続きで解決を目指します。

📣 弁護士からのアドバイス:『争いたくない』そのお気持ちと、正当な権利の実現

今回のように、特定の相続人に全財産を譲るという遺言に関するご相談は、決して珍しいものではありません。ご家族を亡くされた悲しみの中で、さらに相続トラブルに直面されるお気持ちは、察するに余りあります。

多くの方が、「身内と争いたくない」というお気持ちから、ご自身の正当な権利である遺留分の請求をためらってしまいます。しかし、何もしなければ、不公平な結果を甘んじて受け入れることになり、後々大きな後悔を残すことにもなりかねません。

大切なのは、感情的にならず、ご自身の法的な権利を冷静に把握し、専門家を交えて粛々と手続きを進めることです。弁護士は、法律の専門家であると同時に、あなたの代理人として冷静な交渉を行うことができます。ご自身の権利を知り、専門家と共に一歩を踏み出すことが、円満かつ正当な解決への最も確実な道筋です。


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遺言書の内容、遺留分の請求、相続人間でのトラブルなど、相続問題はご家族の感情が絡む非常にデリケートな問題です。お一人で悩まず、まずは専門家である弁護士にご相談ください。大東法律事務所は、あなたの正当な権利を守るため、親身にサポートいたします。

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【ご相談事例】「兄が遺産を独り占め?」 親の預金の使い込み疑惑でお悩みの方へ

2025-07-29

📄 ご相談の背景

先日、父・雄一郎さん(仮名)を亡くされた鈴木恵子さん(仮名)。相続人は、恵子さん、長年お父様と同居していた兄の一郎さん(仮名)、そして遠方に住む弟の二郎さん(仮名)の3人です。遺言書がなかったため、相続人全員で遺産分割について話し合うことになりました。

しかし、その話し合いは、恵子さんが想像していたものとは全く違う、辛いものとなりました。兄の一郎さんが、「俺は長年親父と同居し、面倒を見てきた。だからこの家(評価額4,000万円)は全部俺のものだ。お前たちは残りの預貯金でも分けていればいい」と、あまりにも一方的な主張を始めたのです。

恵子さんが法律通りの分割を求めても、兄は聞く耳を持ちません。さらに追い打ちをかけたのが、お父様の預金通帳を見て発覚した使途不明金の存在でした。亡くなる前の2年間で、口座から合計700万円以上もの大金が引き出されていたのです。兄に問い詰めても、「親父の生活費や入院費に決まっているだろう」と声を荒げるばかりで、具体的な説明は何一つありません。兄への不信感と、話し合いが全く進まない絶望感の中で、恵子さんは当事務所にご相談に来られました。


💬 ご質問と弁護士の回答

質問1:「『長年親と同居し、面倒を見た長男だから家は自分が相続する』という兄の主張は、法的に認められるのでしょうか?」

回答:
ご安心ください。お兄様の「家は全部自分が相続する」という主張が、法的にそのまま認められることはありません。遺言書がない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に従って遺産を分けるのが大原則となります。今回のケースでは、相続人はお子様3名ですので、恵子さん、一郎さん、二郎さんの法定相続分は、それぞれ資産のプラスもマイナスもすべて含めた全遺産に対して「3分の1」ずつです。

「長男だから」「同居していたから」といった事情だけで、他の相続人の相続分が自動的になくなることは、決してありません。まずは、ご自身の権利が法律でしっかりと保障されていることを知り、冷静に対応することが大切です。

質問2:「父の口座から多額の引き出しがあり、兄が使い込んだ疑いがあります。このお金について、遺産分割で追及することはできますか?」

回答:
はい、強く追及すべきです。被相続人の預貯金を管理していた相続人が、その使途を明確に説明できないお金(使途不明金)は、相続において大きな問題となります。まずは、金融機関からお父様の口座の取引履歴を取り寄せ、いつ、いくら、どこへ出金されたのかを正確に把握することから始めます。

その上で、お兄様に対して、その使途について具体的な説明と証拠(領収書など)の提出を求めることができます。もしお兄様がご自身の目的のために無断で費消していたことが疑われる場合、その金額を「遺産」に持ち戻して遺産分割協議を行うよう主張したり、不当利得として返還を求めたりすることが可能です。ただし、お兄様が「父からもらった」「頼まれて引き出した」と反論してくることも想定され、その立証には専門的な対応が求められます。

質問3:「兄が感情的になり、全く話し合いになりません。このような場合、どうすればよいのでしょうか?」

回答:
当事者同士での話し合い(遺産分割協議)がこれ以上進まないと判断した場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるのが有効な手段です。調停では、調停委員という中立な第三者が間に入るため、お兄様も感情的になるのを抑え、冷静に話し合いに応じる可能性が高まります。

特に使途不明金の問題は、事実関係の調査や法的な主張が複雑になりがちです。調停という公的な場で、証拠に基づいて一つ一つの論点を整理していくことで、公平な解決を目指すことができます。このような法的な手続きを円滑に進め、ご自身の正当な権利を主張するためにも、弁護士が代理人として交渉や手続きを行うことが、解決への近道となります。


📌 この事例のポイント整理

  • 遺言書がない場合の遺産分割は「法定相続分」が基本であり、同居などの事実だけで一方的に多くの遺産を取得できるわけではない。
  • 被相続人の預金に不自然な引き出し(使途不明金)がある場合、その使途を明確にするよう求め、場合によっては遺産への返還を主張できる。
  • 当事者同士で感情的な対立になり話し合いが進まない場合は、家庭裁判所の「遺産分割調停」を利用して、第三者を交えた冷静な話し合いの場を持つことが有効である。

📣 弁護士からのアドバイス:『家族だから』で曖昧にせず、財産の問題は明確に

ご家族が亡くなられた後、その財産の管理を特定の相続人が行っていた場合、今回のようなトラブルは残念ながら非常に多く発生します。特に、長年親と同居していると、親の財産と自身の財産の境界線が曖昧になりやすく、それが大きな不信感や対立の火種となってしまうのです。
お金の問題は、たとえ家族であっても明確にすることが、最終的に良好な親族関係を維持するためにも極めて重要です。
「家族なのだから」「今まで面倒を見てきたのだから」という言葉で、ご自身の正当な権利が曖昧にされてしまう前に、ぜひ一度専門家にご相談ください。客観的な証拠に基づき、法的な観点から冷静に話し合うことが、こじれてしまった糸を解きほぐす最善の方法です。


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遺産分割を巡るご親族との対立は、精神的に大きなご負担となります。
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