遺留分侵害額請求とは、相続において一部の親族に認められている最低限の遺産取り分である「遺留分」を受け取れなかった方が、その侵害された額を請求できる制度のことです。
遺留分侵害額請求は、基本的に相続の開始や遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に請求しなくてはなりません。
そのため、請求をお考えであればできるだけ早くに対応することが求められます。
この記事では、遺留分侵害額請求の手続きの流れについてご説明いたします。
遺留分侵害額請求はご自身で対応されることも可能ですが、手続きや必要な資料を集めるのにご不安がある場合は、弁護士など専門家に依頼されることをおすすめいたします。
このページの目次
遺留分侵害額請求の流れ
遺留分侵害額請求の手続きの流れとしては、下記の通りです。
- 相続人、相続財産の調査
- 遺留分侵害額請求の意思表示通知を行う
- 交渉の実施
- 合意書の取り交わし
- 遺留分の回収
それぞれのフェーズについて詳しく説明します。
また、上記の例は交渉で解決した場合の流れです。交渉が決裂した場合は、ここからさらに調停や訴訟で争うこととなります。
1 相続人、相続財産の調査
遺留分侵害額請求をする際にまずしなければならないのが、相続人と相続財産の調査です。
誰が相続人なのか、相続財産には何があるのかを把握しないと、正確な遺留分侵害額を算出できません。
その他、場合によっては生前贈与の有無なども調べます。
相続人の調査は、自治体から戸籍を取り寄せて調べます。財産についてはそれぞれの種類(預金、不動産など)によって調査方法が異なります。
2 遺留分侵害額請求の意思表示通知を行う
基本的にはいきなり裁判などで争うのではなく、交渉から始めるのが一般的です。
そのため、まずは相手に「私は遺留分侵害額請求を行います」という意思表示をしなくてはなりません。
これは口頭で伝えるだけでも可能ですが、言った言わないの問題に発展する恐れもありますし、消滅時効にも関わりますので、内容証明郵便などを活用した方がよいでしょう。
3 交渉の実施
意思表示の通知書を郵送したあと、相手方と交渉を行います。
調査した資料などをもとに、実際に侵害された遺留分の額面を計算し、提示します。
話し合いがなかなか進まない、トラブルに発展する恐れがある、といった場合は話し合いの内容を記録化しておくと安心です。
4 合意書の取り交わし
相手との交渉の結果、話がまとまれば、まとまった内容を書面にして残しておきます。書面に残すことで、後から合意した、合意してないのトラブルになることを防げます。
分割で支払いを受ける場合などは、可能であれば、公正証書にしてもらう方が、相手が支払を怠ったときにすぐに強制執行等の手続きに移れるため確実です。
5 遺留分の回収
話がまとまって合意書を作成した後は、相手が遺留分を支払ってくれるのを待ちます。
万が一相手が支払わない場合は、別途訴訟や強制執行などの手続きを取ることもあります。
話がまとまらない場合は調停、訴訟へ
当事者同士での話し合いがまとまらない場合は、裁判所に対して、遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
調停では、調停委員と呼ばれる職員が、当事者両方の事情を個別に聞いて話し合いを行います。
裁判所を間に挟んで話し合いを行うため、当事者だけで話し合いを行うよりも円滑に進むことが多いです。
調停でも話し合いがまとまらない場合は、訴訟の提起を検討します。
訴訟では、遺留分侵害の事実を客観的に証明しなければなりません。
どのような証拠を提示すべきか、どのように準備を進めるべきかについては、法律の専門家である弁護士へご相談されることをおすすめいたします。
遺留分侵害額請求をご検討されているならご相談ください
ここまで遺留分侵害額請求の手続きの流れについて説明してきましたが、とても難しそうという印象を持たれた方も多いのではないでしょうか。
事実、専門的な知識が必要となるケースも多く、ご自身だけで対応するのは非常に大変です。
話し合いで円満に合意できればよいですが、場合によっては調停や訴訟にもつれ込むことも考えられます。
こうなると、やはり弁護士などの専門家に依頼した方がスムーズに交渉を進められますし、より有利に手続きを進められる可能性が高くなります。
遺留分の侵害にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。