家族信託は、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法のことです。
家族信託を活用することで、認知症の対策や、柔軟な財産管理、世代を超えた財産の承継が可能となります。
ここでは、家族信託のメリットとデメリットについて、それぞれ説明します。
このページの目次
家族信託のメリット
家族信託には、認知症対策・柔軟な財産管理など、以下の4つのメリットがあります。
- 認知症対策になる
- 成年後見制度と比べて柔軟な財産管理ができる
- 世代を超えた財産の承継方法を指定できる
- 倒産隔離機能によって財産が保護される
それぞれ詳しく解説していきます。
認知症対策になる
家族信託は、認知症対策として有効です。
認知症により判断能力が低下した場合、本人による財産管理が困難になることがあります。
あらかじめ家族信託を設定しておけば、いざ認知症となってしまったときに、家族による財産管理をスムーズに開始することが可能となります。
例えば、将来老人ホームに入る場合、空き家となる自宅を売却して入居費用や生活費にあてたいというケースが考えられます。
しかし、本人が認知症となった場合、意思確認ができないため不動産を売却することは困難となります。
あらかじめ家族信託で「自宅を売却して老人ホームの入居費用や生活費にあてる」と設定しておくことで、必要な時に家族が代わって自宅を売却し、入居費用や生活費をまかなってもらうことができます。
成年後見制度と比べて柔軟な財産管理ができる
家族信託は、成年後見制度と比べて柔軟な財産管理ができるというメリットがあります。
成年後見制度は、判断能力が不十分な人の財産管理を支援する制度ですが、利用者の意思に合わせた柔軟な対応が難しいことがあります。
成年後見制度では、あくまで本人の財産を維持・管理することが目的とされており、例えば
リスクのある資産運用や、相続税対策を行うことはできません。
家族信託であれば、委託者本人が自分の意思で信託条件を設定できるため、積極的な資産運用や相続税対策を含め、個別の家族の事情やニーズに合わせた柔軟な対応が可能となります。
世代を超えた財産の承継方法を指定できる
家族信託では、自分が亡くなった後、財産を相続した者がなくなった場合の相続についても、財産の承継方法を指定することができます。
遺言と異なって、自分が亡くなった時の相続だけでなく、その後の相続についても指定することが可能となります。
例えば、先祖代々の自宅不動産を長男に相続させたい。ただし、長男には子がいないので、長男とその妻が亡くなった後は次男の子(孫)に相続させたいというケースがあります。
長男の妻が「次男の子に自宅不動産を相続させる」という遺言を残してくれればよいのですが、確実ではありません。このような場合には、家族信託で次のように受益者を設定しておくことで、希望通りの相続を実現することができます。
- 第1受益者 :父親
- 第2受益者 :長男(父親が亡くなった場合)
- 第3受益者 :長男の妻(長男が亡くなった場合)
- 残余財産受益者:孫(長男の妻が亡くなった場合)
これにより、長男→長男の妻→孫(次男の子)と、民法上の規定とは異なる方法で順次財産を承継させることが可能となります。
倒産隔離機能によって財産が保護される
家族信託によって委託された財産は、受託者個人の財産と区別して扱われ、仮に受託者が破産したり差押えを受けたとしても影響を受けません。これを、信託の倒産隔離機能と言います。
倒産隔離機能により、受託者の経済的な困難によって信託財産が失われるリスクが軽減され、委託者本人の意向に基づいた財産の継承や保全が実現できます。
家族信託のデメリット
家族信託のデメリットとしては、手続が複雑であること、設定時に費用が掛かることが挙げられます。
手続が複雑である
家族信託の設定は手続きが複雑であり、専門的な知識が必要となります。
家族信託の特長として、それぞれの状況に応じて自由に設計することで、個別の事情に応じたプランを作成することができるという点があります。単にひな形に従って書類を作成すればよいというわけではなく、家族構成や財産の内容、その他様々な状況に応じて細かい調整が必要になります。
また、家族信託の内容によっては、公正証書を作成したり、信託口座を作成したり、不動産の登記手続を行ったりする必要もあります。
そのため、適切な家族信託を設定するには、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要となります。
設定時に費用が掛かる
家族信託を行う場合、信託内容の設計や、公正証書の作成、不動産がある場合には名義変更にかかる登録免許税など、合計で50万円〜100万円程の費用がかかります。
成年後見制度であれば、申立てにかかる弁護士費用等は数十万円程度ですので、これと比べると、最初にかかる費用は大きくなります。
ただし、成年後見制度を利用して、司法書士や弁護士が成年後見人・後見監督人に選任された場合は、月額2~4万円のコストが10年以上続くこともあります。
家族信託であれば、家族に管理を任せるためこのようなランニングコストがかかりません。そのため、長期的な目線でいうと費用対効果は良いと言えるでしょう。
家族信託に悩まれたら弁護士にご相談ください
家族信託に関する手続は専門的な知識が必要であり、適切なアドバイスやサポートが欠かせません。専門家に相談することで、様々な状況や要望に応じた最適な家族信託の提案を受けることが可能となります。
当事務所では、家族信託の設計から信託契約の締結、登記手続までトータルでサポートし、資産管理や相続対策を円滑に進めるお手伝いをいたします。
家族信託に関する初回相談は無料でお受けしております。お困りの方はお気軽にご相談ください。